美的数学のすすめ

初等整数論のうち、平方剰余の相互法則の意味を当面の目標としたいと思います。ゆくゆくは、ガウス和、円分体論まで到達したいです。

n=13の場合のガウス周期

 前回は\(n=7\)の場合のガウス周期(Gaussian period)を解説しました。

biteki-math.hatenablog.com

 今回は、\(n=13\)の場合のガウス周期を考えます。\(n-1=12\)の約数は12,6,4,3,2,1ですので、これらの周期が作れるはずです。\(n=11\)でなく\(n=13\)としたのは\(n-1\)の約数がたくさんあるからです。

 \(n=13\)の円分多項式を\(\Phi(x)=x^{12}+x^{11}+\cdots+x+1\)とおき、1の13乗根の1つを\(\zeta=\exp(\frac{2\pi i}{13})\)とおきます。

\( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)の原始根

 \( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)の原始根として2を選びます。すると、2のべき乗を\(\bmod{13}\)は次のようになります。

2のべき乗 \(2\) \(2^{2}\) \(2^{3}\) \(2^{4}\) \(2^{5}\) \(2^{6}\) \(2^{7}\) \(2^{8}\) \(2^{9}\) \(2^{10}\) \(2^{11}\) \(2^{12}\)
\(\bmod{13}\) 2 4 8 3 6 12 11 9 5 10 7 1

6周期

 最初に6周期を考えます。6周期は\( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)を平方剰余・平方非剰余で2等分します。これは、ガウス和を計算する際にすでに求めています。 biteki-math.hatenablog.com

\[\begin{align} \alpha&=\zeta^{4}+\zeta^{3}+\zeta^{12}+\zeta^{9}+\zeta^{10}+\zeta \\ \beta&=\zeta^{2}+\zeta^{8}+\zeta^{6}+\zeta^{11}+\zeta^{5}+\zeta^{7} \end{align}\] とします。\(\alpha\)に含まれる\(\zeta\)の肩には平方剰余が、\(\beta\)に含まれる\(\zeta\)の肩には平方非剰余がのっています。以前に計算したとおり、\(\alpha,\beta\)を解とする方程式は、 \[ x^{2}+x-3=0\tag{1}\] となります。そして、この方程式の判別式は13です。

 3周期

 次に3周期を考えます。3周期は\( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)を「4の倍数」乗で4等分します。すると、\(\alpha,\beta\)は偶数・奇数で分けたものですので、さらにそれをそれぞれ2等分することになります。 \[\begin{matrix} \alpha'=& &\zeta^{3}&+ &\zeta^{9}&+ &\zeta \\ \alpha''=&\zeta^{4}&+&\zeta^{12}&+&\zeta^{10}& \\ \beta'=& &\zeta^{8}&+&\zeta^{11}&+&\zeta^{7}\\ \beta''=&\zeta^{2}&+&\zeta^{6}&+&\zeta^{5}& \end{matrix}\]

とおくと、\(\alpha',\alpha''\)は\(\alpha\)を2等分、\(\beta',\beta''\)は\(\beta\)を2等分したものになります。

\(\alpha',\alpha'',\beta',\beta''\)は4つあるので4次方程式の解と係数の関係を考える必要がありますが、まずは、\(\alpha',\alpha''\)と\(\alpha\)の関係を考えてみます。

 \(\alpha'+\alpha''=\alpha\)です。また、 \[\begin{align} \alpha'\alpha''&=(\zeta^{3}+ \zeta^{9}+ \zeta)(\zeta^{4}+\zeta^{12}+\zeta^{10})\\ &=\zeta^{7}+\zeta^{15}+\zeta^{13}+\zeta^{13}+\zeta^{21}+\zeta^{19} +\zeta^{5}+\zeta^{13}+\zeta^{11}\\ &=3+\beta\\ &=3+(-1-\alpha)=2-\alpha \end{align}\]

したがって、\(\alpha',\alpha''\)を解とする方程式は、 \[ x^{2}-\alpha x+(2-\alpha)=0 \tag{2} \] です。同様に\(\beta',\beta''\)を解とする方程式は \[ x^{2}-\beta x+(2-\beta)=0 \tag{3} \]

です。

このように、3周期は6周期を係数とする2次方程式の解となります。これは、3が6の約数であるために成り立つ性質です。

\(f'\)が\(f\)の約数のとき\(f'\)周期は\(f\)周期を係数とする方程式の解としてあらわされる。

 この性質を使い、1のn乗根が求められる場合があります。1の17乗根が2次方程式で溶けるのもこの性質を使っています。\(n=13\)の場合も、方程式(1)を解くことにより\(\alpha,\beta\)を求め、それから方程式(2)を解くことにより\(\alpha',\alpha''\)を求めることができます。

 さて、\(\alpha',\alpha'',\beta',\beta''\)を解とする方程式を求めましょう。\(\alpha',\alpha''\)を解とする方程式は(2)、\(\beta',\beta''\)を解とする方程式は(3)ですので、方程式(2)(3)を掛けることにより、\(\alpha',\alpha'',\beta',\beta''\)を解とする方程式を求めることができます。

\[\begin{align} ( x^{2}-\alpha x+(2-\alpha))( x^{2}-\beta x+(2-\beta)) &=x^{4}-(\alpha+\beta)x^{3}+(2-\beta+\alpha\beta+2-\alpha)x^{2} \\ &\ \ \ \ -(\alpha(2-\beta)+\beta(2-\alpha))x+(2-\beta)(2-\alpha) \\ &=x^{4}+x^{3}+2x^{2}-4x+3 \end{align}\]

 したがって、\(\alpha',\alpha'',\beta',\beta''\)を解とする方程式は、 \[x^{4}+x^{3}+2x^{2}-4x+3=0 \tag{4}\] です。そして、この方程式の判別式は\(19773=3^{2} 13^{3}\)です。(これはsageで計算しました。)

 方程式(4)の判別式が\(3^{2} 13^{3}\)となり13の他に3が素因数となっています。なぜ、13以外に3が素因数となっているのか、私なりの理解を次回説明したいと思います。

 4周期

 4周期は\( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)を3等分するものですので、その分類方法は、いわゆる立法剰余による分類になります。したがって、 \( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)の原始根を2とした場合の2のべき乗表で、次のように分類します。

2のべき乗 \(2\) \(2^{2}\) \(2^{3}\) \(2^{4}\) \(2^{5}\) \(2^{6}\) \(2^{7}\) \(2^{8}\) \(2^{9}\) \(2^{10}\) \(2^{11}\) \(2^{12}\)
\(\bmod{13}\) 2 4 8 3 6 12 11 9 5 10 7 1

\[\begin{align} \alpha&= \zeta^{8}+\zeta^{12}+\zeta^{5}+\zeta \\ \beta&= \zeta^{2}+\zeta^{3}+\zeta^{11}+\zeta^{10} \\ \gamma&= \zeta^{4}+\zeta^{6}+\zeta^{9}+\zeta^{7} \end{align}\]

 そして、ここまでのように\(C(n)=\zeta^{n}+\zeta^{13-n}\)とおくと\(C(n)C(m)=C(n+m)+C(n-m)\)が成立しますので(\(C(n)\)は\(2\cos\)です。)計算が楽になります。

詳細は省略しますが、 \[\begin{align} \alpha+\beta+\gamma &=-1 \\ \alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha&=-4\\ \alpha\beta\gamma&=-1 \end{align}\] が成り立ちます。したがって、\(\alpha,\beta,\gamma\)を解とする方程式は \[x^{3}+x^{2}-4x+1=0\] であることが分かります。そして、この方程式の判別式は\(169=13^{2}\)です。(これはsageで計算しました。)

 2周期

 2周期は\( (\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times}\)を6等分します。そして、その分類は、\(\zeta\)と\(\zeta^{12}\)、\(\zeta^{2}\)と\(\zeta^{11}\)などのように互いに複素共役となるものを1組にするものですので \[\begin{align} \alpha'&=\zeta+\zeta^{12}\\ \alpha''&=\zeta^{5}+\zeta^{8}\\ \beta'&=\zeta^{2}+\zeta^{11}\\ \beta''&=\zeta^{3}+\zeta^{10}\\ &\cdots \end{align}\]

そして、この分類は4周期のそれぞれを2等分したものになります。(たとえば、\(\alpha'+\alpha''\)は4周期の\(\alpha\)になります。)そして6周期と3周期との関係と同様に、2周期\(\alpha',\alpha''\)を解とする方程式は、4周期を係数とする方程式となります。そして、2周期を解とする方程式はこれらをすべて掛け合わせることにより求めることができます。

 あるいは、2周期については、別の方法で求めることもできます。これまでに何回か出てきた方法ですが、円分方程式\(x^{12}+x^{11}+\cdots+x+1=0\)を\(x^{6}\)で両辺を割ったうえで\(t=x+\frac{1}{x}\)で変数変換をします。すると、この方程式は\(t=\zeta+\zeta^{12}\)や\(t=\zeta^{5}+\zeta^{8}\)などを解として持つことがわかりますので、2周期を解としてもつことがわかります。  このような計算を行うと、全ての2周期を解とする方程式は \[x^{6}+x^{5}-5x^{4}-4x^{3}+6x^{2}+3x-1=0\] であることが分かります。そして、この判別式をsageにより計算すると、\(371293=13^{5}\)となります。

 1周期と12周期

1周期と12周期は自明ですが、\(\zeta,\zeta^{2},\cdots,\zeta^{12}\)のそれぞれが1周期でありこれらを解とする方程式は 円分方程式\(\Phi(x)=x^{12}+x^{11}+\cdots+x+1=0\)です。そしてこの方程式の判別式をsageを用いて計算すると、\(1792160394037=13^{11}\)であることがわかります。

 また、12周期は\(\zeta+\zeta^{2}+\cdots+\zeta^{12}=-1\)であり、あえてこれを解とする方程式を考えると\(x+1=0\)となります。そして、1次式の判別式は1と定義しますので、この方程式の判別式は1です。

 まとめ

 以上より、\(n=13\)の場合の周期をまとめると次のようになります。

\(f\) \(f\)周期 \(f\)周期を解とする方程式 判別式
1 \(\zeta,\ \ \zeta^{2},\ \ \cdots\ \ ,\zeta^{12}\) \(\Phi(x)\) \(13^{11}\)
2 \(\zeta+\zeta^{12},\ \zeta^{2}+\zeta^{11},\ \zeta^{3}+\zeta^{10}\)
\(\zeta^{4}+\zeta^{9},\zeta^{5}+\zeta^{8},\ \zeta^{6}+\zeta^{7} \)
\(x^{6}+x^{5}-5x^{4}-4x^{3}+6x^{2}+3x-1\) \(13^{5}\)
3 \(\zeta^{3}+\zeta^{9}+\zeta,\ \zeta^{4}+\zeta^{12}+\zeta^{10}\)
\( \zeta^{8}+\zeta^{11}+\zeta^{7},\ \zeta^{2}+\zeta^{6}+\zeta^{5}\)
\(x^{4}+x^{3}+2x^{2}-4x+3\) \(3^{2}13^{3}\)
4 \(\zeta^{8}+\zeta^{12}+\zeta^{5}+\zeta,\zeta^{2}+\zeta^{3}+\zeta^{11}+\zeta^{10}\)
\(\zeta^{4}+\zeta^{6}+\zeta^{9}+\zeta^{7}\)
\(x^{3}+x^{2}-4x+1\) \(13^{2}\)
6 \(\zeta^{4}+\zeta^{3}+\zeta^{12}+\zeta^{9}+\zeta^{10}+\zeta\)
\(\zeta^{2}+\zeta^{8}+\zeta^{6}+\zeta^{11}+\zeta^{5}+\zeta^{7}\)
\(x^{2}+x-3\) 13
12 \(\zeta+\zeta^{2}+\cdots+\zeta^{12}=-1\) \(x+1\) 1

 3周期の判別式のみほかと違い\(3^{2}13^{3}\)と3を素因数として含んでいます。この点は、私の計算ミスかと思い何度も計算をし直し、最終的にはsageで数値計算までしてみましたが、その結果、やはり上の表は正しいようです。なぜ、3を素因数として含んでいるのかについては、私なりの理解を次回ご説明したいと思います。また、併せて、多項式の判別式についてもご説明したいと思います。