美的数学のすすめ

初等整数論のうち、平方剰余の相互法則の意味を当面の目標としたいと思います。ゆくゆくは、ガウス和、円分体論まで到達したいです。

剰余類の基本的な性質

初等整数論のうち、平方剰余の相互法則の意味を当面の目標としたいと思います。ゆくゆくは、ガウス和、円分体論まで行きたいです。

1.\(p\)で割った余りの集合(剰余類)

 \( p \) を素数とするとき、\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)を整数を\( p\) で割った余りからなる集合とします。(\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)は、ゼット・オーバー・ピーゼットと読みます。)

\[\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}=\{\overline{0},\overline{1},\cdots, \overline{p-1} \pmod{p} \} \]

このとき、\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)は加減乗除が可能となる。

 すなわち、\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)は、体(field)である。

つまり、①足し算、②引き算、③かけ算、④割り算が可能となります。

ここで、①足し算、②引き算、③かけ算ができるのは、\(p\)が素数の場合に限らず、合成数の場合でも成り立ちます。④割り算が可能となるのは、\(p\)が素数の場合に限ります。

ここで、「割り算が可能となる」とは、任意の\(a\not\equiv 0\pmod{p}\)に対して、整数\(b\)が存在して、\(ab\equiv 1\pmod{p}\)となることを意味します。このとき、\(b=\frac{1}{a}\)または\(a^{-1}\)と記します。

 (例) \(p=5\)のとき、\(2\cdot 3=6\equiv 1\pmod{5},\ \ 4\cdot4=16\equiv 1\pmod{5} \)なので、\(\frac{1}{2}=3,\frac{1}{4}=4\)である。

 (例) これに対し、\(p=10\)のとき、\(2\cdot 5=10\equiv 0\pmod{10}\)となり、\(\frac{1}{2}\)や\(\frac{1}{5}\)は存在しない。(仮に存在するとすると、\(2\cdot 5\equiv 0\)の両辺に\(\frac{1}{2}\)を掛けることにより、\(5=0\)となってしまいます。)

2.\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)で割り算が可能なことの証明

 証明は、油分け算(又はユークリッドの互除法)を使えば簡単です。 油分け算とは、

 \(n,m\)を互いに素な整数とするとき、整数\(a,b\)が存在して \[ an+bm=1 \] とできる。

という定理です。 証明については、下記を参照して下さい。私は、この記事で始めて「油分け算」と言う言葉を知りました。

一次不定方程式と油分け算 - tsujimotterのノートブック

さて、ここで\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)で割り算が可能なこと(つまり、\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)が体であること)を証明します。

(証明) 任意の\(a\not\equiv 0\pmod{p}\)に対し、\(p\)は素数ですので、\(a\)と\(p\)は互いに素です。(ここで、\(p\)が素数であることを使っています!)この\(a,p\)に対して油分け算を適用すると \[ na+mp=1\] となる、整数\(n,m\)が存在することになります。この式の\(\pmod{p}\)をとると \[ na\equiv 1\pmod{p}\] です。つまり、任意の\(a\not\equiv 0\pmod{p}\)に対し、\(n\)が存在して、\( na\equiv 1\pmod{p}\)であることが証明できました。

このように、\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)で割り算が可能なこと(つまり、\( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)が体であること)の証明は、「油分け算」が本質的であることが分かりますね。

「油分け算」は、初等整数論では非常に基本的な定理の一つです。整数を通常の整数からガウス整数やそれ以外の代数的整数に拡大しても、イデアルに関して成立します。